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日蓮の足跡、空白の十二年間 [日蓮]


                                                                                                                                      日蓮は京都にのぼり、比叡山で参学した。彼がそこでどのように学んだかは明らかでない。ある者は俊範について学んだともいうが、当時俊範はすこぶる名高い僧であったが、後年日蓮のいかなる文書のなかにも、その名はない。彼の講義をきくことがあったにしても、その弟子と名のるほどの関係ではなかったのであろう。
また俊範以外の名前もみあたらない。そうとしたら、彼は主として、事物を師として、自分で学んでいったと考えられる。親鸞、道元もはじめよき師に出会わなかったが、後に法然といい、如浄というよき師にめぐりあったのに比べ、彼は生涯師という人にめぐりあわず、書物、あるいは、世界の事象を師として学んだということが考えられる。彼は終始、世界の事象のなかに直接法そのもの、真理そのものを求めていくように運命づけられていたともいえよう。
はじめ、日蓮は自分の田舎言葉に悩み、京言葉を習熟するようにつとめたことも考えられる。だが、彼は次第に、田舎言葉になじんだ者はそれでいいではないかと思うようになったのである。なにも京言葉に対して劣等感をもつ必要はないのではないか。そのような形式的なことに心をとらわれるのは、自分がほんとうに法を求めず、自分に自信がないしるしではないかと考えるようになった。
ここには、日蓮のひらきなおりがあり、自分に徹しようという態度がある。それはそのまま、彼の学習のはげしさを示している。彼はこのような態度で彼の疑問にぶっつかっていった。その疑問とは、「人が最もすばらしく生きる道はただ一つであるにちがいない。それなのに、いま釈迦の教えといって、多くの宗派が争っている。ほんとうに釈迦の教えとは一体そのなかのどれであろうか」というのが、彼の問いであった。
当時の仏教界には、まじめに法・真理を求めようとする者はほとんどいなかった。法・真理を求め、それに生きるはずの僧侶の世界は俗世間以上に乱れ、いたずらに地位や財産を求め、戦争にうつつをぬかしているような世界であった。俗世間で尊ばれる権力がそのまま通用していた。
だが、こういうなかで、叡山は少なくとも法・真理を求めようとする者たちの中心地であり、その書庫は経典類でうずまっていた。日蓮はそのなかにうずまって、自分の疑問を自分で解決しようとしたのである。自分の疑問を解決できるような師にめぐりあわなければ、そうするほかはない。
当時、日蓮が親鸞、道元に直接めぐりあっていたなら、その後の日蓮はどのようになっていたかわからないが、運命は彼らを引き会わせることもなく、日蓮はあくまで、彼の悩み、苦しみのなかに彼をたたきこんだままであった。それは十二年の長きにおよぶのである。その間のことは明らかでない。
推量できることといえば、その間、叡山にとじこもりきりというのでなく、暇をみつけては、京都、奈良大阪などの各地の寺にでかけて、直接、倶舎宗、成実宗、三論宗、華厳宗、禅宗などを学んだということである。そればかりか、漢学、国学、歌道、書道なども学んだ。すべて、それは、日蓮の疑問を明らかにするためであった。
このように、十二年間の長い間、ただひたすらに、本を読むかたわら、山に住み、野を歩き、法・真理を求めつづけたのである。これこそ、釈迦が法・真理を求めつづけた態度を当時に再現したもので、すべてのものを前提にしながら、同時にすべてのものを否定し、ただ一つの法・真理を創造しようとつとめたのである。
その生活が法・真理を生みだすためには、非常に重要なのである。その期間は長ければ長いほどよい。一見無駄のようにみえるこの生活に、価値がある。人はともすれば、そのような生活を軽視し、時代はそんなことを待ってくれないように思いがちである。
しかし、時代はその間にそれほど悪化するものでもないし、問題はむしろ、早急な考えにもとづいて、なにかをやったとしても、全然よくならないことである。じっくりと考えて、時代をよくする方法を考えたらよいのである。
日蓮はそれをやりとおした。その結果、彼は「法華経こそ、諸経にすぐれたものであり、諸経は法華経のためにあり、いまこそ、法華経を弘通する時である」という決意に到達する。
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